臨黄ネット概要


1.はじめに

 平成12年11月29日、政府国会は、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)を制定しました。 これからの日本は、IT路線を重要視していくと宣言したわけです。実際に平成12年末ごろより、ブロードバンドと呼ばれる地域高 速通信網も急速に構築整備され、その風潮はますます高まっております。
 時節到来し、平成13年春より臨黄合議所内に「臨黄寺院ネットワーク運営委員会」(委員長・嶺興嶽老師)が発足しました。これ は、昨年度より各派本山担当者が集まって協議してきた推進委員会を布石として、臨黄合議所で正式に認められた事業です。
 この事業には、大きく二つの主眼があります。一つは宗門の公的なホームページの構築、そしてもう一つは、寺院間の情報交換と 相互参究の場の構築です。

2.公的なホームページ構築の必要性

 今、町を歩いていると、携帯電話でしきりにメール交換をしている、コミュニケーションに飢えた若者たちで溢れています。 また、一般の社会人も、日常的にパソコンを前にインターネットやEメールを利用して仕事をしている方が少なくありません。
 この若者や社会人達は、ネットワーク世代と呼ばれる若い世代で、手紙や電話のよりも手軽にEメールをあやつり、雑誌や書籍 ・辞書のように物事を調べる手段としてインターネットを使い、どんどん利用しています。
 さて、インターネットには検索サイトと呼ばれるページがあり、調べたい語句を入力し検索すると、その語句を含むページに瞬 時に移動していくことができます。
 しかし、おそるべきことですが、そこに書かれていることは必ずしも信頼のできるものばかりではなく、また、悪意はなくと も非常に曖昧なものも多数あります。
 例えば、「禅」という語句で検索したのに、新々宗教の公式ページに入ってしまう可能性もあるのです。
 ところが、臨済宗黄檗宗には、禅について書かれたページが多数あるにも関わらず、公的なホームページとなるとそう多くは ありません。末寺レベルで開設されているサイトは確認できるだけでせいぜい70程度、本山にいたっては南禅寺派、相国寺派、 黄檗山万福寺の3本山のみといった状態でした(平成13年4月時点)。
 つまり、せっかく禅に興味を持った若者がいても、みすみす新々宗教の信者になったり、ニセ僧侶の手に落ちたり、誤った知 識を与えられたりしかねないのです。
 そういった意味で、我が宗門は、早急に公的なホームページを持ち、それに付随して各派本山も公的ホームページを立ち上げ、 インターネット上に情報を開示していくべきではないでしょうか。また、ひいてはこれが、正確な情報を探し手に与えていく事 になり、その結果、コミュニケーションに敏感で有望な悩める青少年を正しい禅の世界へといざない、彼らを仮想の世界から実 際に対面して語ることのできる関係へと導き出すことになるでしょう。

3.寺院間の情報交換と相互参究の場として

 この臨黄ネットは、臨黄各派寺院間の派を超えた情報交換網として機能します。また、同様に、距離を隔てた本山末寺の関 係の上でも機能していきます。例えば、末寺より提出する請願書式の類がオンラインで処理できたり、檀信徒会館の予約情報 を確認して檀参の手配ができたりというような事も将来的に実現可能です。
 派を超えた情報交換網と書きましたが、さらに地域・時間の制限も取り払われます。北海道の妙心寺派の和尚が九州の南禅 寺派の和尚と、教学の事について論議する場が容易に設定できるのです。それは、同じ場所に同時刻にいなくても可能なので す。
 また、檀信徒から寄せられた悩み事に対して、一人で対応できないような場合、全国各派の経験豊かな和尚方に相談を持ち かけ、協議して幅の広い返答をすることもできうるわけです。

4.全体的構成について

 この臨黄寺院ネットワークはどのような構成になるのか、その概略を説明しておきます。
 サイト自体は、大きく分けて、公開領域と非公開領域に分けられます。公開領域には、公式サイトとして必要な宗旨、伝灯 (法系)、各派本山の紹介、坐禅の仕方等を説明し、坐禅会情報や、自分の身近な臨済・黄檗寺院を探せるページなどがあり ます。
 かわって、臨済宗黄檗宗の寺院のみが、それぞれに与えられたパスワードを使ってのみ入ることができる非公開領域には、 宗門内寺院だけが利用できる情報や、後継者探しの相談、法式や教学に関する議論を行なう会議室などで自己研鑚する場所も あり、といったように、宗門内の僧侶間の情報交換と相互参究の場として利用できるようになっています。
 また、この非公開部分には、臨黄メール(仮称)という私書箱システムを設置し、各寺院間(本山も含む)のやりとりに限 定した、より安全なメール方式を考案しました。このメールアドレスは、まったくの非公開であり、外部からの迷惑メールも 届くことは無く、また、相手が開封したかどうかまでも、送信者自身がチェックできるような仕組みにもなっています。
 このネットワークを利用し、宗門人の一人一人がネットワーク社会の持つ様々な側面を理解し、情報を活用していくことの 重要性をご理解いただき、宗門の伝統的な立場を踏まえて、なおかつ、新しい時代に臨機応変に立ち向かっていただきたいと 願っています。
 いろいろ面倒だし、自分は他人の情報を得られたらそれだけでいい、というような態度では、ネットワークは有名無実のも のとなってしまいます。一人一人が、自らもネットワークに参加して、何かに協力しよう、情報を提供しよう、誰かの役に立 とう、その一角を担おうという姿勢を持つ、相互参加型の活用をしていくことが必要です。
 皆様方のご理解とご協力、積極的なご参加をおねがいいたします。